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カンボジアクロマーマガジン35号

美しき花のように。天女アプサラの物語

[取材・文] 矢羽野 晶子 [写真] 多賀 史文、岡 克哉 [制作] 安原 知佳(クロマーマガジン編集部)

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所作のすべてが「ことば」

舞踊は動きひとつひとつに意味があり、動きそのものが「ことば」である。カンボジアの古典舞踊には型が約4,500あり、それらを組み合わせて感情やストーリーを表現する。古典舞踊の特徴は、腰を下げ重心を下に置き、ゆっくりと流れるような動きや、手足の指を弓のように反らすことなどが挙げられる。また、演者は歯を見せてはならず、どんな感情も口を閉じて表さなければならない。古典舞踊で用いられる役柄は、女役、男役、魔物役、猿役の4役で、昔はすべて女性が演じていた。同じ表現をするにも、役どころで表現の仕方が微妙に変わってくる。例えば「笑う」という動作は女役なら口の前に手をかざすだけが、魔物役はそのあと肩を揺らすダイナミックな動きが加わる。

踊り、それは喜び

古典舞踊の演目は、約数十種類あると言われる。大きくは2種類に分けられ、ラーマーヤナのカンボジア版「リアムケー」を元にしたストーリー系と、アプサラダンスに代表される非ストーリー系である。ストーリー系では、悪魔との戦いあり、手に汗握る冒険ありと、喜怒哀楽に満ちた内容であるが、最終的には必ずハッピーエンドで終わる。また、非ストーリー系はすべて歓喜の舞であり「喜」の表現しか用いられない。カンボジア語で踊りを意味する「ロバム」という言葉には、喜びや楽しさという意味も含まれているという。美しい衣装をまとって踊る喜び。親子の愛、男女の愛。カンボジア人にとって踊りとは、すなわち喜びなのである。

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アプサラダンス-手の形・指の動きの意味-

①植える
②芽が出る
③芽が出る
④葉が出る
⑤葉が出る
⑥枝が出る
⑦花が咲く
⑧実をつける
⑨熟す
⑩落ちる

アプサラダンス

アンコールワットの壁画をモチーフに創られたという「アプサラダンス」では、美しい天女たち(姫と侍女たち)が、花咲く庭で楽しげに遊ぶ様子が描かれている。演目自体にストーリー性はないが、踊りの際に歌われる唄の意味に合わせて振りがつけられている。

左:準備ができた 右:気に入る

左:準備ができた
右:気に入る

左:自分の美しさを讃える 右:あなたにあげます

左:自分の美しさを讃える
右:あなたにあげます

 

左:花が咲く 右:愛してる

左:花が咲く
右:愛してる

 

左:お庭を周る 右:笑う

左:お庭を周る
右:笑う

今日、私は庭の花を見て楽しんでいます
美しく咲く花々をずっと傍におきたい
もしあなたが気に入れば、あなたにも花をあげましょう
庭へ着いた愛らしい侍女たちは、姫と一緒に庭を廻って見ました
侍女は花を摘み姫へ差し上げて、姫に喜んでもらいました
あまりにも夢中で、宮殿を出てしまったことにも気づかない
美しく清純な姫の姿に、殿方の心は惹きつけられる
※原文より編集部による意訳

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メイク・着付け

昔は公演のたびに衣装を縫い付けていたため、準備に1時間以上かかったという。比較的簡易になった現在も30分はかかる。

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道具・装飾品

カンボジア語で「冠」という意味を持つモコット。衣装の中で最も神聖。昔は金製のものもあり、重いもので2kgもしたという。

 

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