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カンボジアクロマーマガジン18号

~淡水魚のある暮らし~クメール食探訪

[取材・文・写真・制作] 徳成 和子、西村 清志郎(クロマーマガジン編集部) マレーシアフリーペーパー「セニョ~ム」2010年3月号より一部改訂

 

タイ料理と言えば「辛い」、ベトナム料理と言えば「香草」、ではカンボジア料理と言えば?さあ、ちょっと考えてみましょう。ここカンボジアの中心には東南アジア最大の湖・トンレサップ湖があります。巨大なメコン河の流域です。GDPの約10%弱を漁業が占めます。伝統舞踊の一種にフィッシュダンスがあります。さて、勘がいい方ならもうピンと来たころでは。そうこの国の食のルーツは「淡水魚」なのです。さあ、淡水魚を探しに町へと繰り出しましょう。

「淡水の大河」トンレサップ湖

 猛暑が続く乾季とスコールが降り注ぐ雨季、その二つの季節が絶え間なく繰り返されるカンボジア。田園には金色の穂がしなり、軒先の果樹にはフルーツがたわわに実る。
 大河メコンと繋がる湖・トンレサップは「魚の宝湖」であり、アンコール時代からこの国と人々を支えてきた。東南アジア最大の淡水内陸湖であるトンレサップは、クメール語で「淡水の大河」を意味する。琵琶湖の10倍にもなる湖は季節によりその大きさを伸縮変化させる特殊な湖として知られている。
 伸縮する理由は、カンボジアの雨季と同時にヒマラヤ山脈の雪解けが始まることにある。その雪解け水は各国を通り過ぎ、大河メコンへと流れ込む。 途中、各地に降るスコールを吸収しながら集積された大量の水はメコン流域を氾濫させ、湖へと続くトンレサップ川を逆流し、メコンの魚と共にその湖へと流れ 込むこととなる。こうして湖は広がり、乾期に育った草木を覆っていき、魚が繁殖しやすい環境が自然と作られていく。
 専門家によると約200種の淡水魚がこの湖に生息しており、国民一人あたりの淡水魚漁獲量は世界一を誇る年間約20 kg、そしてその殆どが国内消費で賄われているという。そう、カンボジア国民の身体を構成しているカルシウムとタンパク源は淡水魚から来ていると言える。

vol18_sub_02-01            水上生活をする人々はボートを使用し食材などを売買する

vol18_sub_02-02           一般家庭の調理場。網を使い魚を炭火にかける

アンコール王朝から続くトンレサップ湖の風景

クメール民族の聖地であり、歴史の中心となるアンコールトム・バイヨン寺院。その回廊には当時のトンレサップ湖が描かれている。湖上で繰り広げられる隣国との戦場シーンでは、その水中には大魚が群れをなし、大ワニが戦闘で傷ついたものにむさぼりつく。その近くでは船上で宴を楽しむ者や、漁の様子なども細やかに描かれている。また市場でのやり取りや焚き火で魚を炙っている様子も残されている。
 戦いのシーンを除くと、その様子は八百年の時を超えた現在もほとんど変わっていない。これらからも分かるように、トンレサップ湖はアンコール王朝以前からカンボジアの人々の食生活、食文化とは切っても切れない関係にあったと言える。

vol18_sub_02-03           バイヨン寺院第一回廊に描かれているトンレサップ湖の様子

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