ホーム 過去のマガジン記事 カンボジア経済: 20回目:安倍首相 カンボジアを訪問

カンボジアクロマーマガジン30号

 2013年11月16日、安倍総理大臣はカンボジアを訪問しました。国際会議出席を除き、日本の首相がカンボジアを訪問するのは13年ぶりとなります。

 まず、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)による活動中に殉職された故高田晴行警視(文民警察官)及び故中田厚仁氏(国連ボランティア)並びに1970年代にポル・ポト派の支配地域を取材中に病死された故石山幸基氏(共同通信プノンペン支局長)の慰霊碑に対し、それぞれ献花されました。故高田晴行岡山県警警視(当時警部補、33歳)は1993年5月4日昼過ぎ、タイ国境に近いカンボジア北西部のバンテイメンチェイ州アンピル村で、国道691号をパトロール巡回中に、ポル・ポト派とみられる身元不明の武装ゲリラに襲撃されました。国連ボランティアとして選挙監視に赴いた故中田厚仁氏(当時25歳)は、1993年4月8日に凶弾に倒れました。亡くなられて20年の節目の年に首相が訪問されたこととなります

 安倍首相は、シアモニ国王に拝謁され、更に、フン・セン首相とおよそ1時間会談しました。この中で安倍首相は、日本の安全保障政策について、「『積極的平和主義』の立場から、地域や世界の平和と安定に貢献していく決意だ。安全保障政策を見直すことになるが、平和国家の理念は決して変わらない」と述べ、理解を求めました。これに対しフン・セン首相は、「世界の中で日本の役割は大きくなっており、日本の貢献は世界の安定に資することになる。全面的に支持したい」と述べました。また、カンボジアの経済発展に向け、ODA等を通じて、日本が引き続きインフラ整備や教育支援などを行うことや、日本企業の進出を後押しするため、官民合同で投資環境の整備を進めること、それに日本の先進的な医療技術や制度を生かし、カンボジアの医療の向上に協力していくことを確認しました。また、日本側のビザの緩和や二国間直行便についても話題になりました。両首脳はこうした内容を盛り込んだ共同声明を発表しています。

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日本が息の長い協力を続けている、カンボジア国立母子保健センター

 安倍首相は、医療関係セミナーにも参加され、「日本が強みとする救急救命病院をプノンペンに、海外で初めて設立することは喜ばしく、日本とカンボジアの協力のシンボルとなるであろう、また、今 回の訪問では日本とカンボジアは医療の分野でも具体的な協力を進めていくことで合意したところであり、日本の高度な医療をカンボジア国内で実現することによって、カンボジアの医療の発展及び人材育成と、カンボジアの皆様の健康の向上に貢献していきたい」と挨拶されました。更に、日本がこれまで長く協力してきた国立母子保健センターを視察されました。分娩室や新生児室等の院内視察中、現地医療関係者からは、緊急産科ケア等の緊急医療サービス提供のための協力に対する期待が寄せられました。これに対し、安倍首相から、「フン・セン首相との会談でも保健医療の分野において、具体的協力を一層進めていくことで一致しており、本センターが両国間の協力の先駆けとして,今後も大きな役割を発揮することを期待する」と回答されました。

 親日国のカンボジアに日本の首相が訪れ関係を強化するのは、大変重要で貴重なことです。両国間の友好関係がますます深まることが期待されます。

 


鈴木 博(すずき ひろし)

2010年にカンボジア総合研究所を設立。
2007年からカンボジアに住んでいます。
ブログ「カンボジア経済」もご覧ください。
ブログ: http://blog.goo.ne.jp/economistphnompenh

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