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カンボジアクロマーマガジン7号

甦るカンボジアシルク -途絶えた伝統の復活-

<取材/文/写真:クロマーマガジン編集部> 参考文献:森本喜久男著『カンボジア絹絣の世界』(NHK出版)

 

ゴールデンシルク

golden_silk

カンボウジュ種と呼ばれるカンボジアの蚕は黄色い繭になり、そこから引かれる生糸も黄色。それが目に当たるとゴールデンシルクと呼んでもおかしくないほど、生糸は輝くような黄色で、「黄金の繭」「黄金の生糸」と言われる由縁である。カンボジアの生糸は、品種改良されている日本や中国の生糸に比べて、シルク本来の良さがある。そのカンボジアの糸で織られた布は独自の風合いがあり、身体に限りなくやさしい。

伝統織「絹絣」

カンボジアの伝統織物である絣の産地は、プノンペンの南、タケオ州のプノンチソーと呼ばれる遺跡のある山の周辺の村。これらの地域では、高床式の簡素な家屋の階下に織機が添えられている。プレイベン州とカンダール地方は織物の村として有名で、メコン河を遡上したコンポンチャムの町からメコン河を支流を入った所にある。その他、コンポンチャムのチャム族の村は絣織りの産地として有名。庶民の布、サローンやクロマーはカンポット、カンポンスプー、バッタンバン、シェムリアップなどの地域で織られている。

記憶は織り手の中に

カンボジアの絣は、織り上げる前の糸を先に紐で括って柄を作る先染めが原則。糸を単色に染めるのではなくて、糸を染めるときに、染まらない部分を作るためにその部分を別の糸で括る「防染」技術を用い、糸の上に出来上げる模様や柄をつくりだす。括っては染め括っては染めという行程を何度も何度も繰り返し、かなりの時間を要する。その複雑な模様や柄は、代々母から娘へ伝えられたもので、織り手の記憶の中に刻まれ、手が覚えている。

 

染めも、天然素材が使われ、黄色、赤色、黒(茶)、緑色、藍、という具合に「五色の絣」が伝統的なもの。生糸が染まってから、やっと織りにかかるが、3メートル余りの布が織り上がるまでに染めの段階を含めて2~4ヶ月かかる。大変な技術と時間を要するのだ。

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