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カンボジアクロマーマガジン29号

コンポンプルック 浸水する村と、人々の暮らし

[取材・文] 多賀史文、永広まりこ [写真] Hou Sokratana [制作] 安原知佳

村の大工

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  村のいたる所から槌や鋸の小気味良い音が響いてくる。村は8月から9月にかけて、中間床の取り外しや床下の補強、船の修理など水没への備えに忙しい。
 村人の1割ほどが大工を生業としている。コンポンプルックの大工たちは高床住居の建設はもちろんのこと、仮設小屋の建設や造船、船の修理まで行う。故に大工は、村の人々の生活を支える花型職であり、大工は子どもたちの憧れの職業であるという。
 寺院近くの陸地で、大工の老人が木船をひっくり返えして防水修理をしていた。のみで木と木の継ぎ目を丁寧に削って、そこによった繊維を詰め込み、さらに粘土状の樹脂を詰め込む。それから船底に天然ゴムと古いエンジンオイルを混ぜた液体を厚く塗る。
 「もうじき村から陸地はなくなってしまうからね。ここのところは船の修理で大忙しなんだよ。」と老人は話す。この村に住む人々にとって船とは、生活を切り開く器。家族の一員のようなものであるという。故に村人たちは古くなった船でも、出来るだけ直して使い続けるのだそうだ。
 突然、お前も船をもっているかと尋ねられ、持っていないと応えると、「この村じゃ船を持って無い男は半人前なんだ。それじゃあ婿にもいけないよ。そうだ、うちの船を一艘買っていきなさい。」と老人は言って笑った。

自然に歩調を合わせて生きる村コンポンプルック。

 伸縮する湖が作り出した人びとの暮らしは、素朴ながらも笑顔に満ちている。このような浸水域の生活は、これからもカンボジアの一つの姿として受け継がれていく事だろう。

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